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9月の名残りに 青女月、最後の雨の彼方に望月は笑う
聞けばここで地元の和太鼓のグループが演奏するのだとか。アトリエの床の間には「唯」の一文字を一気呵成に書いた掛け軸と、ススキ、ワレモコウなどの秋草を活けた鶴首の花瓶に、かわいらしい兎や松茸、里芋を模した和菓子をのせた三方。それらの凛としたあしらいを眺めながら、聞こえてくる雨音。秋のしめやかな侘しさが、客の集うひと時の空間にあふれて一人私は、準備にかいがいしく動く陶房の人々の声を懐かしい夢のように、あるいは風のようによそよそしく聞き流している。弱い雨の中で、用水路の細い流れにいくつもの彼岸花を投げ入れながら私は見知らぬ人たちの魂の平安を祈っていた。これから咲こうとするもの、今を盛りと咲くもの、すでに色あせ朽ちたものも私は自由に折っては投げ入れた。華は何も言わず落ちてゆき流れのままに不釣合いな紅が悲しく美しかった。あの時私は神だったのか、人間だったのか、それとも運命だったろうか。 夜 雨は風を連れてますます激しく降った。集まった人たちの温かい心で時間は小舟のように歌いながらすすんでいく。私は知っていた。この夜、月は確かに雨雲をうっとりと照らしながら笑っていたことを。 三重県一志郡白山町三ヶ野そば山 白山窯にて |