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空も心も春の懐に
夜、母は自分達が始めて念願の店を持ったときの事を、まるで昨日のことように生き生きと話すのでした。「お父さんとやっと持った店の開店日。雨だったのよ。お母さんは道まで出ていってね。知り合いの人を見つけてはお店に呼び込んだのよ。」若い父と母がいました。独立して、何としても成功させたいと情熱に溢れた若い夫婦。環境に左右されず、自分から常に開拓していった母の姿がそこにありました。雨は雪に変わって、時間のように全ての上に積もっています。静にしずかに。子供たちは、その頃の父と母の年齢を越えて“今”という時間を生きています。父を送り、少しずつ、思い出と同居していく時間が多くなってゆく母親の姿を目の当たりに見ながら、「親は死んでも親、そして子どもは子ども」の言葉を想う。自分もまた一人の子の親であることを神様に妻に感謝するのです。
母に本棚から見つけた時間を経たヘルマン ヘッセの詩集から
「ほのかな雲」
ひとひらの、細い、白い、
(宇部:山口県)
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