|
月の旅、月光の便り
思い起こせば、いつも天空に月が煌々と輝いていたような。その月は時に魔鏡となってパフォーマンスの最後を飾り、あるいは、秋深まる佐渡の島の宿に独り、夜、庭へ出て屋根を夢のように濡らす青く清らかな月光を浴びたり。それと呼応するように、私のパフォーマンスもまた「月に捧げた」内容が多かったような気がします。徳島県吉野川市合併三周年記念パフォーマンスは、阿波忌部のエピソードをベースに現れた舞台のテーマは「月の運ぶ過去、日輪の運ぶ未来」でした。福井市の佐佳枝廼社にて奉納したのは「観月の夕べ」のシリーズ。11月3日に大津市のホテル、ロイヤルオークの庭でも水の神と季節の女神が月の光に誘われて始まる物語。一年の中でも大気が澄んでくるこの季節は際立って月の在り様も、心に深くしみこんできます。
ある時は滞在しているホテルの窓から、あるいは移動の列車の中から、太陽と違い、たゆとうように降りてくる月影は私の中の何かを呼び起こしてくれるのです。衣装デザインはもちろんのこと、テーマも、構成も、シーンごとのタイトルも。あまりに続く旅に、独り月が射し込む部屋で何も考えず、ボォーとしていることがあります。以前「月の光は人を狂わす」なんてことも聞いたことありました。私には穏やかで典雅なエネルギーをもって疲れた心も体も癒してくれる光の球です。たとえ、あの光が太陽の反射であったとしても。「美」の世界を追い続けてきた時広20年目の世界。2008年4月3日、大阪の中央公会堂で「世界」をテーマにしたパフォーマンスを決めました。「メッセージ性が強い作品」と言われ続けた代表作と新作を縦横無尽に披露しながら、パフォーマーたちとのコラボレーションによってこれまで私が表現したかった世界の集大成を披露することになるでしょう。そんな折、2009年。「月」をテーマにしたオペラの演出と衣装デザインの依頼がきました。友であり、憧れでもあり、子守唄でもある月との絆はまだまだ続いていくようです。
(霜月 東京) |